*[趣味・娯楽] ボストンよりの里帰り!

大琳派展会場にて

本日休み。昨日、歯の詰め物がとれてしまったので、歯医者にいくなどして過ごす。

さて先日、仕事を早上がりさせてもらい、東京国立博物館で開催中の「大琳派展−継承と変奏−」、および江戸東京博物館で同じく開催されている「ボストン美術館 浮世絵名品展」をはしごしてきました。

連休最終日で少しはすくなくなってるかなと淡い期待を抱いていたのですが、やはり両展とも大変な人気で、外で並ぶというほどではありませんでしたが、会場内はたくさんの人、人、人。ゆっくり鑑賞するというわけにはいきませんでしたが、全く観ることができないということもなく、それなりに楽しむことができました。

この2つの展覧会をみながら気がついたのですが、両展には大きな違いがありました。
その違いとは、お客さんと作品との距離です。

琳派展では、屏風や掛け軸など、大きな作品が多かったので、お客さんも作品との距離感を比較的自由にとりながら、遠くから面的に捉えたり、近くによって詳細に観察したりと、思い思いの鑑賞をされていました。
おかげで私も、あまり圧迫されることなく、ゆっくりと鑑賞することができました。

一方、ボストン美術館のほうでは、お客さんが額の中に入った浮世絵のすぐそばに寄って鑑賞しているので、幅2列程度の行列がずっとつづいており、それに耐えきれない人が列から離れて遠くからみているという感じでした。

鑑賞の時間もそれぞれに違いますので、長く観ている人がいると行列も動かないという感じで、やや窮屈な鑑賞となってしまいました。

たしかに錦絵というのは、多色刷の版画であり、しかも今回のボストン美術館からもどってきた作品のウリというのは、日本に残っている同じ浮世絵作品と比べると、初版刷りであり、しかも当時の色合いが残っているところにあるので、お客さんもそのあたりのことを知ってか、通常の展覧会ではありえないほど近くによって鑑賞しています。
しかもロープなどもなく、その気になれば触ることもできるくらいの距離に、たくさんの人たちが行列をつくっているわけです。

そういうなかで、どうにも気に障ってしかたがなかったのが、作品から1,2センチはなれているかどうかという距離で、指を動かしながら作品を鑑賞される方々です。
気持ちはわからなくはありませんが、この行為は顏を近づけて作品をみるといった類の行為以上に嫌な感じを持ちましたし、そういうことをする人って意外と多いんですよね。
約2時間、鑑賞しているなかで、2,30人はいたと思います。

本来浮世絵は、その大きさのゆえに、他の美術作品と比較して、それほど距離をとって鑑賞できるようなものではありません。そういった類の美術品であるからこそ、今回江戸博では、作品の前にロープをはったり、必要以上に作品と鑑賞者を隔てるような空間を作らなかったのだと思います。
その試みのおかげで、鑑賞者は、ボストンより里帰りした数々の浮世絵の名作のすばらしさをいかんなく味わうことができました。
しかし一方では、上記のような指さし行為を許す結果ともなってしまったわけです。

会場側の好意を無にするような「指さし」、やめてもらいたいものですね、ホントに(怒)

もともと浮世絵を描いた絵師も、こんな風にたくさんの人の目に触れるような鑑賞のされ方をするとは思っていなかったはず。
衆人向けに書かれたものではないため、こうした状況を引き起こしてしまったのもやむを得ないのかなとも思います。
その点は大琳派展にでていた作品とは、そもそもの性格が違うともいえます。

このようにタイプの異なる芸術作品ではありますが、共に江戸時代の町民の中から生まれた、当時の息吹を伝えてくれる作品です。
人混みをかき分けながらでも、多くの人たちにみてもらいたい両展覧会でした(「大琳派展」の話はまた機会があればします)。


役者絵の にらみとながの にらめっこ