*[趣味] マーラー、マーラー

1/31東フィル定演ポスター

本日休み。仕事面での落ち着きをよそに、対人関係では何かとザワザワ。
「いい加減にしろ!」そんな台詞もついつい出てしまう今日この頃。
そんな日々のいやな気持ちをほぐしてくれるのはやはり大好きな「クラシック」です。


実は先日、とある集まりの際に、大学時代の後輩から、私にとって「神」とも「友」とも言えるような存在である、あのグスタフ・マーラー様の交響曲第10番(未完の作)が演目となっている東京交響楽団のチケットを頂きました。
また、次の日には、これまたマーラー交響曲第1番「巨人」が、あのチョン・ミュンフン指揮、東京フィルハーモニー演奏であります。


ということで、これ幸いと一昨日、昨日と、これから盛り上がるであろう「マーラー・イヤー」を一足早く満喫。
まさにマーラー三昧を味わって参りました。


まずは初日のプログラムから。

2010年 1/30(土) 6:00p.m.
川崎名曲全集 第53回


指揮=飯森範親
ピアノ=ベンジャミン・グローヴナー


リスト/ピアノ協奏曲第1番

マーラー交響曲第10番


ピアノ協奏曲では、若手ピアニストのグローヴナー氏による、しっかりとした技術に裏打ちされた豊富な音色を堪能。
これからが楽しみなピアニストですね。


休憩をはさんでメインの10番。
10番は、いわずとしれた未完成曲であり、マーラーは草稿を残したのみで、草稿の前段階である四段譜は全楽章がほぼ完成しているものの、スコアの完成からはほど遠い状況にありました。
今回の演奏は、イギリスの音楽学者デリック・クックが1960年に全曲を復元し、さらに改訂を加えて89年に出版された「デリック・クック補筆完成版 第3稿 第2版」です。


そういう経緯のある曲なので、「マーラーが生きていたらどういう曲をつくっていただろうか」という思いが、どうしてもついてまわります。
これまで生で聞いたことがあったのは1楽章の「アダージョ」のみであり、全曲を生で聴くのは今回が初めてでした。


通して聞いてみた感想としては、やはりマーラーの曲だなということ。
補筆されているとはいえ、マーラーらしいメロディラインはあちこちに感じられます。


が、一方で、「響き」という点では、不満も残ります。
マーラーの「らしさ」は、メロディラインだけでなく、重厚な音の響きにもあります。
そのあたりは、少し物足りなさを感じました。
もっともクック自身は、この楽譜は10番の完成版ではなく、あくまで草稿を演奏するための版だといっているようですから、なるべく作意を押さえて譜面をつくったのでしょう。
そう考えると、これは仕方のないことなのかもしれません。


演奏自体は、気になるところも少しありましたが、全体的には満足のいくものでした。
ホルンがもう少しがんばってくれるとベストだったのですが・・・
マーラーはホルンが命!ですからねえ。


この曲は指揮者も、楽団も、いろんな意味でけっこう疲れるんだろうなと思います。
ほんとうにおつかれさまでした。


続いて二日目。プログラムは以下の通り。

2010年 1/31(日) 3:00p.m.
第780回 オーチャード定期演奏会


指揮=チョン・ミョンフン
ピアノ=キム・ソヌク


モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488 *

マーラー交響曲第1番 ニ長調「巨人」


モーツァルトの方、特に期待していたわけではなかったのですが、思いの外いい演奏でした。
ただ、実を言えば、アンコールで演奏した曲のほうが数段よかった!
観客のみなさんもそう思っていた方が多かったようで、心なしか拍手の数も長さもこちらのほうがあったような気がします。


いい心持ちで休憩時間を過ごし、いよいよ「巨人」です。


第1楽章は、ホールとの相性もあったのかもしれませんが、オケの響きにややムラがあったように感じました。
が、第2楽章以降は、もう完璧な演奏だったといっても過言ではありません。
チョン・ミュンフンさんの情熱的な指揮と、独特の「ゆらし」というか「タメ」に、オケがしっかりと食らいつく。
まさに指揮者とオケとがぴったりと息を合わせて「巨人」を作りあげていく、そんなすばらしい演奏でした。


弦楽器も重厚な響きを奏で、木管楽器がそこにあわさる。
金管楽器もトランペット、トロンボーン、そしてホルンが、荘厳なマーラーの世界を再現。
そして打楽器がしっかりと流れをつくる。
あ〜、ほんとに行ってよかった!!!!!


ホールを出る頃には、ここ数日のくさくさした気持ちも晴れ、実にいい気持ちで帰途についたのでした。
東京で生活をすることは、いろいろと大変なことも多いのですが、こうした経験を比較的低コストで味わうことができるという点で、大きなメリットがあります。
しかも今年は先述のとおり「マーラー・イヤー」!
すべての演奏を聴きに行くことは無理ですが、できるだけ多くの演奏を聴きに行けるようにしたいものですね。




鳴り響く その音の先に 神の影